保健室の先生との出会い
頑なに食事を拒否つづけた結果、
中学1年生の6月くらいには145cmの私の体重は35kgを切るようになった。
ある体育の授業日、その日はプール開きだった。
曇り空でプールの水はひんやりとしていたけど、泳ぐのは嫌じゃなかった。
先生の言う通りに、一人ずつ列になって自由形や平泳ぎで50m泳ぎ切る
気持ちよく泳いでいたが、泳ぎ切ったところで体に異変が現れた。
「あれ、足が動かない・・・」
水の中で浮力があるはずなのに、一歩前に進もうとしても体が重くて動かない。
それに泳ぐ前よりどんどん体温が下がっている気がした。
「どうしよう…」
咄嗟に助けを呼べる友達もおらず、プール内でガタガタ震えながら立ち止まっていた。
それに気づいた教員が急いで駆け寄ってくれ、私を抱え込んで保健室へ連れていってくれた。
母親が私の食事量に口を出すようになってから保健室の先生に連絡をしていた様子で、
保健室の先生は私のことをよく知っている様子だった。
「そんなに震えてなにがあったの?」
毛布で包んでくれながら優しく声をかけてくれた。
体育の教員が事情を説明し、私はしばらく保健室のベッドで休ませてもらうことになった。
暖かい飲み物をくれ、徐々に体調が回復していた。
体調が戻ってからは保健室の先生から食事量が少ないことを心配された。
また食事量のことを言われるのかと、
呆れたが、親や姉と違って先生は「何があって食べたくないの?」と
私が食事を拒否する理由を聞いてくれた。
当時はうまく答えれなかった気がするが、
初めて私のことを全面的に拒否しない大人がいることに気づいた。
それをきっかけに保健室の先生のことはかなり信頼し、昼休みは話をしに遊びに行くようになった。
そんな中、保健室の先生から母親へ
「べいちゃんは拒食症の疑いがあります。小児科を受診してみてはどうですか」
と提案があったらしい。
最初、母親から受診に行こうと言われたときは
「なんで私が病院に?病気でもなんでもないじゃん」
と反発していたが、信頼している先生からの提案だと聞いて、それなら一度行ってみてもいいかな
と思い、母親と総合病院の小児科を受診した。
初めての小児科
小児科の先生は女性で、20年経った今でも覚えているくらい優しい笑顔をした先生だった。
「べいちゃん、よく来てくれたね。」
「いっぱい辛かったでしょう」
優しい笑顔と私のことを否定しない声掛けに初対面の先生の前でわんわん涙を流した。
学校で友達がいないこと、食べるのが怖い事、
痩せてないと意味がないこと、
お母さんに食べろとうるさく言われていること、
毎日を苦痛に感じること、自分の存在が嫌なこと
少しずつ、言葉は下手だが思っていたことを全部吐き出した。
後ろで母親も話を聞いていたが、母親も泣いていた。
そんな私の話を途中で遮らずに真剣に耳を傾けてくれた先生。
一通り話終わって、落ち着いてきて今度は先生が話し始めた。
「べいちゃんが今苦しいのは病気のせいなんだよ」
「べいちゃんは何も悪くないんだよ」
「べいちゃんはすごく頑張りすぎちゃうんだよね。」
自分が病気なんて微塵も思った事がなかったけど、先生にそう言われて妙に納得したのを覚えている。
そして先生はこう続けた
「このままでは栄養失調で命が危ないです」
「入院して先生と一緒に元気になれるよう頑張ろうか」
命が危ない?
入院??
そんな大袈裟なこととは思っておらずかなりびっくりしたが、
母親は大いに賛成し翌日から早速入院の手続きが始まった。
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